君としんみり話す、予期したよりも元気がよいのがうれしい、どちらが果して病人か!
歩々生死、刻々去来。
あたゝかな家庭に落ちついて、病みながらも平安を楽しみつゝある抱壺君、生きてゐられるかぎり生きてゐたまへ。

 六月廿四日[#「六月廿四日」に二重傍線] 快晴。

令弟に案内されて市内見物。
仙台はよい都会だ、品格のある都会である、市内で郭公が啼き、河鹿が鳴く。
広瀬川、青葉城。
東北学院に青城子を訪ねる、君は温厚な紳士である、寂しい人でもある(その事情は後で君の口から聞いた)。
午後青衣子君来訪、抱壺君父子と共に会飲、しめやかな酒であつた。

 六月廿五日[#「六月廿五日」に二重傍線] 曇。

握飯と傘とを持つて、そして切符までも買つて貰つて、松島遊覧の電車に乗り込む。
塩釜神社参拝、境内神さびて、おのづから頭がさがる、多羅葉樹の姿、松島遊園、――あまりに遊園化してゐる、うるさいと思ふ。
瑞巌寺(雲居禅師の無相窟)。
五大堂、福浦島。
松島は雨の夜月の夜逍遙する景勝であらう。
三時の電車で石巻へ、露江居におちつく、お嬢さんが人なつこくてうれしい。
入浴、微酔、おなじ道をたどるもののあり
前へ 次へ
全80ページ中69ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング