んやりしてゐる。
二階の別室に閉ぢ籠つて身辺整理。
信濃川産の生鮭はおいしかつた、生れて初めて知つた鮭の味である。
若葉にふりそゝぐ雨の音はよい、隣は図書館、裏は武徳殿、あたりはしづかである。
虹果君来訪、おもしろい人である。
銀汀君と仕事の合間には話す、なつかしい人だ、よきパパであるらしい。
長岡散歩、入浴、一番風呂で気持がよかつた。
夕方から句会場――おとなりの仕出屋――へ出かける、会者五六人、遠慮なく話し合ひ腹一杯飲み食ひする、例によつて悪筆の乱筆を揮ふ、十二時近くなつて散会、酔ふて戻つてすぐ寝る、酒よりも水、水。
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   (越後をうたふ)
・くもつてさむく旅のゆふべのあまりしづかな
・湯あがりの、つつじまつかに咲いて
・春がいそがしく狂人がわめく人だかり(北国所見)
・図書館はいつもひつそりと松の花
・若葉して銅像のすがたも(互尊文庫)
   追加数句
・桑畑の若葉のむかうから白馬連峰
・煙突にちかづいて今日の太陽
[#ここで字下げ終わり]
戸隠に小鳥の里[#「小鳥の里」に傍点]あり、うれしいではないか。
一茶翁遺蹟めぐり[#「一茶翁遺蹟めぐり」に二重傍線
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