を抱いて雪も消えた庭に(銀汀に)
・砂丘が砂丘に咲いてゐる草の名は知らない
・とかく言葉が通じにくい旅路になつた
・くもりおもたい空が海が憂欝(日本海)
・みんなかへる家はあるゆうべのゆきき
・なんにもない海へ煙ぼうぼうとして(日本海)
・砂山青白く誰もゐない
[#ここで字下げ終わり]
五月廿七日[#「五月廿七日」に二重傍線] 雨。
まだ明けきらない床の中で話しする、北光君はまじめでそしてあたゝかい人だ。
よしきりが啼きつゞける、お前はまつたくおしやべりだね、裏店のおかみさんのやうに。
よかつた、ほんたうによかつた、万座で雨にふりこめられると、いらない心配をしなければならなかつたであらう。
朝酒、寄せ書、悪筆。
昼酒、雑談、そしてまた乱筆。
夕方から長野銀座を散歩する、雨が降るのに御苦労々々々、郵便局はよかつた、湯屋もよかつた、蕎麦はむろんうまかつた、帰途、すべつてころんだ、そして一句拾つた!
夜は句会、五人で親しく句会、といふよりも座談会、そこには俳人的といふよりも人間的なあたゝかさがあつた、一時近くなつて散会した。
降る、降る、ほんたうに根気よく降りつゞける雨かな。
五月
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