ない。
湯があふれて川となつて流れてゆく、浪費の快感がないでもない。
山の水を縦横に引いて、山の水はつめたくてうまい。
湯の花、そして草津味噌[#「草津味噌」に傍点]。
○ロクロくる/\椀が出来る盆が出来る。……
昼もレコードがうたひ、三味線が鳴るのは、さすがに草津。
しかし草津シーズンはこれからだ、揉湯、時間湯の光景はめづらしくおもしろい、そしてかなしい。
草津よいとこかよくないとこか、乞食坊主の私には解らん、お湯の中に花が咲くかどうか、凡そ縁遠いものです。
[#ここで字下げ終わり]
午后、宿のおかみさんに案内されて、しづかなきれいななぎの湯[#「なぎの湯」に傍点]といふのへゆく、なるほど不便なだけしづかで、紙ぎれや綿きれがちらばつてゐない、しかしこゝもやつぱり特有の男女混浴[#「男女混浴」に傍点]だ、男一人(私に)女五人(二人はダルマ、二人は田舎娘、一人は宿のおかみさんだ)、ぶく/\下から湧く、透き通つて底の石が見える。
皈途、一杯また一杯、酔つぱらつて、おしやべり、――それもよからうではありませんか!
[#ここから2字下げ]
ぼろ/\
 どろ/\
[#ここで字下げ終わり]

 五
前へ 次へ
全80ページ中51ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング