ねあてた、泊銭七十銭、湯銭十二銭。
同宿は病遍路、おとなしい老人、草津といふところは何となくうるさい、街も湯もきたならしい、よいとこでもなささうだ、お湯の中にはどんな花が咲くか解つたものぢやない!
熱い湯にはいつて二三杯ひつかけて、ライスカレーを食べて(これが宿の夕食だ、変な宿だ)ぐつすり寝た。
夢は何?…………

 五月廿二日[#「五月廿二日」に二重傍線] 晴、曇る。

朝湯はほんたうによろしいな、朝は共同湯もきれいだつた。
宿の主人は石工、こつこつこつこつ、でもおちついてしづかだ。
病遍路さんは腎臓脚気でよろ/\して軽井沢――の方へ出て行つた。……
今日一日は休養することにして、ノンキにそこらを歩く。
湯ノ沢といふ場所へ行つた、そこは業病人がうよ/\してゐる、すまないけれど、嫌な気持になつて、すぐ引き返した、かういふ場所でかういふ人々に心から接触してゐる宣教師諸君には頭がさがる、ほんたうに。
白根神社参拝、古風で、派手でないのがうれしい。
草津気分――湯町情調。
[#ここから1字下げ]
何だかうるさいと思つたが、一日二日滞在してゐるうちに何となく好きになるから妙、しかし何となくきた
前へ 次へ
全80ページ中50ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング