、鋭い山丸い山が層々として重なつてゐる、軽井沢の一望も近代的風光たるを失はない。
別荘散在、赤いのや青いのや、日本風なのや西洋流なのや。
かつこう、うぐひす、からまつ、みづおと、そしてほとゝぎすがをり/\啼く、千ヶ滝の水もおいしかつた。
行人稀で、時々自働車。
峯の茶屋で昼飯、こゝを中心にして自働車専用道路がある、私設の有料である。
こゝからすぐ国界県界、道は何だか荒涼たる六里ヶ原を横ぎる。
浅間村牧場、北軽井沢駅。
白樺が多い、歯朶の芽が興を引く、所有建札が眼に障る。
養狐場が所々にある、銀狐を生育さすのである、狐の食料は人間よりも贅沢で月二十円位はかゝるさうな、そして一ヶ年の後には毒殺されて毛皮は数百金に売れるといふ、資金を要する商売であるが、なか/\儲かるさうな。
吾妻《アガツマ》駅から電車で草津へ、五里七十四銭は高いやうであるが、登り登るのだから成程と思ふ、駅で巡査さん駅長さんと雑談する、共に好人物だつた。
殺風景な山や家がつゞいてゐたが、嬬恋《ツマゴヒ》三原あたりの眺めはよかつた。
浅間高原の空気を満喫した。
高く来て肌寒い。
六時頃やつと草津着、やうやく富山館といふ宿をたづ
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