いて若葉した
江畔老に
・けさはおわかれの、あるだけのお酒をいたゞく
・草萌ゆる道が分れる角で別れる
・逢へば別れるよしきりのおしやべり
・さえづりかはして知らない鳥が知らない木に
・水はあふれるままにあふれてうららか
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○自戒一則――
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貪る勿れ、疑ふ勿れ、欺く勿れ、佞る勿れ、いつもおだやかにつゝましくあれ。
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五月十八日[#「五月十八日」に二重傍線](続)
岩村田から小諸まで二里半、汽車の窓から眺める風景は千曲谿谷的なものがある、乙女[#「乙女」に傍点]といふ駅名も珍らしかつた(九州に妻[#「妻」に傍点]といふ地名もあるが)。
小諸へ着いたのは夕暮、さつそく宿を探して、簡易御泊処鎌田屋といふのを見つけた、老婆が孫を相手に営業をつゞけてゐるといふ、前金で六拾銭渡す、茶菓子、座蒲団、褞袍を出してくれる、有難い、夜具も割合に清潔だつた。
暮れきらないうちに、懐古園(小諸城阯[#「阯」に「マヽ」の注記])を逍遙する、樹木が多くて懐かしいが、風が吹いて肌寒かつた。
藤村詩碑は立派なものである、藤村自身書いた千曲
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