から1字下げ]
△天草を干しひろげる
△来の宮神社の禁酒デー
[#ここで字下げ終わり]

 四月二十三日[#「四月二十三日」に二重傍線] 曇、うすら寒い。

朝早く、二人で散歩する、風が落ちて波音が耳につく、前はすぐ海だ。
牡丹の花ざかり、楓の若葉が赤い。
蛙が鳴く、頬白が囀づる。
辨天島は特異な存在である、吉田松蔭[#「蔭」に「マヽ」の注記]の故事はなつかしい。
九時すぎ、三人で下田へ、途中、一郎君と別れる、一郎君いろ/\ありがたう。
稲生沢川を渡ればまさに下田港[#「下田港」に傍点]だ、港町情調ゆたかであらう、私は通りぬけて下賀茂温泉へ。
留置の手紙は二通ありがたかつた。
雑木山がよい姿と色とを見せてくれる。
下賀茂は好きな温泉場である、雑木山につゝまれて、のびやかな湯けむりがそここゝから立ち昇る、そここゝに散在してゐる旅館もしづかでしんみりとしてゐる。
その一軒の二階に案内された、さつそく驚ろくべき熱い強塩泉[#「強塩泉」に傍点]だ、ぽか/\あたゝまつてからまた酒だ、あまり御馳走はないけれどうまい/\。
兎子君が専子君を同伴して紹介された、三人同伴で専子居へ落ちつく、兎子君は帰宅
前へ 次へ
全80ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング