で加減して何度も入浴する、奥さんが呆れて笑はれる。
湯、そして酒、あゝ極楽々々。
午後だん/\晴れる、一郎君といつしよに下田へ向ふ。
山蕗[#「山蕗」に傍点]が咲きほうけてゐる、ふきのとうが伸びて咲いて、咲きをへてゐるのである。
○伊豆の若葉はうつくしい。
白浜の色はほんたうに美しかつた、砂の白さ、海のみどり。
大[#「大」に「マヽ」の注記]平洋をまへに、墓をうしろに、砂丘にあぐらをかいて持参の酒を飲んだ。
至るところに鉱山、小さい金鉱があつた、それも伊豆らしいと思はせた。
下田近くなると、まづ玉泉寺があつた、維新史の第一頁を歩いてゐるやうだ。
浜崎の兎子居に草鞋をぬぐ、そして二三子と共に食卓を囲んで話しつゞける。
酔ふて書きなぐる、いつもの私のやうに。
そして一郎君と枕をならべて熟睡。
伊豆は、湯[#「湯」に傍点]はよいけれど水[#「水」に傍点]はよろしくない、温泉地のどこでもさうであるやうに。
伊豆に多いのは旅宿の立看板[#「立看板」に傍点]と隧道[#「隧道」に傍点]と、そしてバス。
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・この木もあの木もうつくしい若葉
・別れようとして水を腹いつぱい
[#ここ
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