一郎居は春風駘蕩だ、桜の花片が坐敷へ散り込む。
メロン、トマトを御馳走になる、それは君の手作りだ、内湯[#「内湯」に傍点]の御馳走は何より。
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・うら/\石仏もねむさうな
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 四月二十二日

雨、ふと眼覚めて耳を疑つた。
こゝはほんたうにあたゝかい、もう牡丹が咲いて、蚊が出てくる。
温泉は湧出量が豊富で高温である、雑木山の空へ噴き上げる湯煙の勢よさ。
今日の雨はまことによかつた。
       △  △  △
朝湯[#「朝湯」に傍点]のあつさよろしさありがたさ。
朝酒[#「朝酒」に傍点]とは勿体なし。
       △  △  △
ほんたうでない[#「ほんたうでない」に傍点]、といつて[#「といつて」に傍点]、うそでもない生活[#「うそでもない生活」に傍点]、それが私の現在だ。
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△洗濯[#「洗濯」に傍点]、身も心も内も外も。
△花菖蒲の輸出。
△栖足寺の甕(銘は祖母懐、作は藤四郎)
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 四月二十二日[#「四月二十二日」に二重傍線] 花時風雨多、まつたくその通りの雨風だつた。

熱い湯を自分
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