る、味覚の殿堂といつてゐるだけ満員繁昌だ。
砂吐流の新居春風亭[#「春風亭」に傍点]に泊る。
四月九日[#「四月九日」に二重傍線] 小雨――曇。
朝からビールを飲む。
いつしよに出かける、君は丸ビルへ、私はかたこと[#「かたこと」に傍点]庵へ。
武蔵野はなつかしい、うつくしい。
運よく斎藤さん在庵。
同道して徳富健次郎の墓に詣でる。
櫟林のところ/″\に辛夷の白い花ざかり。
青樫荘に前田夕暮氏を訪ふ。
さらに青木健作氏を訪ふ、三十余年ぶりの再会である、でも、昔なつかしい面影は失はれてゐなかつた。
やがて農平君も来訪、四人で歓談、夜の更けるのも忘れて。
斎藤さんは健作君の宅で、私は農平君の宅に泊めて貰ふ。
まことにまことに珍らしい会合であつた。
四月十日[#「四月十日」に二重傍線] 曇。
春寒、ばら/\雨。
みんないつしよに出発、そしてそれ/″\の方向へ別れた。
東京ビルに茂森君徃訪、なつかしかつた、連れられて自働車で新宿へ出て、或るおでんやで飲む、そしてまた十二社へ、酒と女とがあつた。
私は自働車で浅草へ、そこで倒れてしまつた。
友、友、友、友、友。
四月十一日[#「四
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