月十一日」に二重傍線] 曇。

農平君の案内で江戸川の花見に出かける、桜はまだ蕾だ、掛茶屋の赤前垂が黄色い声で客を呼んでゐるばかりだが、飲む酒はある。……
柴又にまわつて川甚でも飲む。
私はまた浅草へ。

 四月十二日[#「四月十二日」に二重傍線] 曇。

おめでたいおのぼりさんとして。
山谷の安宿に泊る、泊るだけは二十五銭。

 四月十三日[#「四月十三日」に二重傍線] 雨。

濡れて層雲社へ帰る、武二君が私の行方不明を心配してゐたさうで、私の癖とはいひながらすまなかつた。
夜は銀座へ、丸ビル人会出席。
かう酒ばかり飲んでゐては困る!

 四月十四日[#「四月十四日」に二重傍線] 晴。

さくらが咲いた、散歩、赤坂見附はよい風景だつた。
武二君と共に迎へられて磊々子居へ。
磊々居滞在。

 四月十五日[#「四月十五日」に二重傍線] 花ぐもり。

朝湯朝酒とは有難すぎる、身にあまる冥加である。
二人でぶら/\歩く、Iさんのお宅で御馳走になる、天ぷら蕎麦、冷酒、池上本門寺、よい森、松がよい。
高輪泉岳寺、香烟がたえない。
それから明治座へ、面白かつた、井上はやつぱりうまい。
銀座裏で飲ん
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