「高くこゝろをさとりて俗に帰るべし」に傍点]”
芭蕉の言葉(土芳―赤冊子)
“鬼が笑ふ”
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五月廿五日[#「五月廿五日」に二重傍線] 晴。
落ちついて読書。
鮮人の女屑屋がやつて来て、お一人で寂しいでせう、といふ、その寂しさをまぎらすべく、鍬を持つて畑に出たが、身のおとろへを痛感するばかりだつた。
蕗の皮を剥ぎつゝ物を思ふ、よう剥げることも追憶の種だ、生々死々去々来々のことはりはよく解つてゐるけれど寂しいことにかはりはない。
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今日の買物――
四十四銭 酒四合
五銭 豆腐二丁
四銭 酢一合
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五月廿六日[#「五月廿六日」に二重傍線] 晴。
ぢつとしてはゐられないから、いよ/\旅へ出かけることにする、せめて広島までゞも歩きたい、そして久しぶりに友達のたれかれに逢ひたい、……沈欝のやりどころがないのである、で、身のまはりをかたづける。……
畑仕事、苗床をこしらへる、唐辛を播いておく。
朝晩は肌寒いほどであるが、日中はだいぶ暑くなつた、それもその筈だ、私はまだ綿入を着てゐる!
寝苦しかつ
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