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五月廿四日[#「五月廿四日」に二重傍線] 曇。
朝酒、御飯までよばれてから帰庵。
身辺整理、整理せよ、整理せよ、心のすみ/″\まで。
Nさん来庵、本をいろ/\持つて来て貸して下さつた、そして焼酎を御馳走して下さつた、感謝々々。
二人うち連れて近郊散策、新緑がうつくしい、水音がうれしい、木苺がうまかつた。
Wさん来庵、ふとん綿ちしや葉をあげる、これだけが私の精いつぱいの謝意のあらはれだ。
焼酎をあほつたからだらう、胃が痛みだして弱つた、死! ぞつとした、いつものやうでもなく、死にたくないやうな気がした、これからは焼酎は飲むまい、飲んではならない(西洋の火酒には縁が遠い)、これだけは必らず実行すべし、生命が惜しいよりも胃痛が堪へられない、そしてまた、酒はうまいけれど焼酎はうまいと思はない。
蚊帳を吊らなければならなくた[#「くた」に「マヽ」の注記]ので、机を南から北の窓へうつす、こんなこともちよつと気分をかへる、だいたい、書斎は北向の窓がよい、落ちついて読み書きが出来る。
夜は今日借りた本を読みつゞけた。
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“高くこゝろをさとりて俗に帰るべし[#
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