州陥落[#「州陥落」に傍点]! そして此国民のおちつき!
日本人は大きくなつた、日本は進みつゝある!
食糧がなくなつたけれど米を買ふには銭が足らないので、うどん玉を買うて帰る、新聞を借りて読む、あれやこれやで今日も暮れてしまつた。

 五月廿二日[#「五月廿二日」に二重傍線] 曇――雨。

昨夜は一睡もしないで、自己に沈潜した、自己省察は苦しかつた、だが、私の覚悟[#「私の覚悟」に傍点]はきまつた。――
私は名誉もほしくない、財産もいらない、生命さへも惜しいとは思はない、いつまで生きるる[#「る」に「マヽ」の注記]か解らないが(あゝ、長生すればまことに恥多し!)、生きてゐるかぎりは私の句を作らう[#「生きてゐるかぎりは私の句を作らう」に傍点]。
すなほにつゝましく[#「すなほにつゝましく」に傍点]、――あるところのものに足りて[#「あるところのものに足りて」に傍点]、いういうとして怠りなく[#「いういうとして怠りなく」に傍点]、――個性の高揚[#「個性の高揚」に傍点]。
久しぶりに花を活ける、卯の花は好きだが、薊も悪くない、総じて野の花はよい。
身辺整理。
白船君から澄太君の手紙を廻送
前へ 次へ
全11ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング