、漏つて漏つて堪へきれなくなつたのだ、梅雨季も近づいてくるが、葺替代がないのだ、あぶなかつた、足すべらして落ちさうだつた。
日本案内記を読みつゞけて、旅したい心をなぐさめる。
珍らしいお客様があつた、Tさんが二人連れでやつてきて、静寂に感心して帰つていつた。
多々桜君の死[#「多々桜君の死」に傍点]は私に堪へがたい痛恨をもたらした、奥さんからの通知に接した時、私は脳天を撃ちのめされたやうなシヨツクを感じた、過ぐる三月にお見舞してよかつた、あれは久しぶりの、そして最後の出会であつたが、あゝ、それにしても、死んではならない君は死んでしまうし、死ねばよい私は死なゝいでゐる、私は自然の矛盾[#「自然の矛盾」に傍点]とでもいひたいものを感じる、そして腹立たしくさへなる。……
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[#横組み]“Natural nonsense”[#横組み終わり]
雑草のたたかひ――
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荒地野菊のたくましさ
ポピーの弱さ
[#ここで字下げ終わり]
五月廿一日[#「五月廿一日」に二重傍線] 晴。
横臥読書、すまない、すまない、すみません。
除[#「除」に「マヽ」の注記]
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