はひといふ、私は見すぼらしい枯木に過ぎないけれど、山をにぎはさないでもあるまいと考へて、のんべんだら/\生き存らへてゐたが、もう生きてゐることが嫌になつた、生きてゆくことが苦しくなつた、私は生きて用のない人間だ、いや邪魔になる人間だ、私が死んでしまへばそれだけ自他共に助かるのである。
枯木は伐つてしまへ[#「枯木は伐つてしまへ」に傍点]、若木がぐい/\伸びてきて、そしてまた、どし/\芽生えてきて、枯木が邪魔になる、伐つて薪にするがよい。
そこで、私は私自身を伐つた[#「私は私自身を伐つた」に傍点]。
[#ここで字下げ終わり]

 一月十日[#「一月十日」に二重傍線] 曇――晴。

東京の榧子さんから、おいしいせんべいを頂戴した。
臥床、しみ/″\死をおもふ、ねがふところはたゞそれころり徃生[#「ころり徃生」に傍点]である。……
暮れ方から石油買ひに出かける、寒月がよかつた。

 一月十一日[#「一月十一日」に二重傍線] 曇。

――米がなくなつた、炭もなくなつた、そして口と胃とがある、生きてゐることは辛い。――
さむいな、さびしいな。
今日やうやく賀状のかへしを五六通書いて出した。

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