一月九日[#「一月九日」に二重傍線] 曇。

粉雪ちら/\、寒い/\、缺乏/\。
午後、ちよつと街へ、六日ぶりに一杯ひつかけたが、酒屋の前を通り過ぎたやうな気分で、はかない/\。
米があるならば、炭があるならば、そして石油があるならば、そして、そして、そしてまた、煙草があるならば、酒があるならば、あゝ充分だ、充分すぎる充分だ!(わざと、充の字[#「充の字」に傍点]を用ひる)
夕方、久しぶりに暮羊君来庵。
身心不調、臥床、生きてゐることの幸不幸[#「生きてゐることの幸不幸」に傍点]。
さびしいけれども[#「さびしいけれども」に傍点]、――まづしけれども[#「まづしけれども」に傍点]、――おちついてつゝましく[#「おちついてつゝましく」に傍点]。――
けち/\するな[#「けち/\するな」に傍点]、――くよ/\するな[#「くよ/\するな」に傍点]、――いうぜんとしてつゝましく[#「いうぜんとしてつゝましく」に傍点]。――
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私が若し昨日今日のうちに自殺するとしたならば、そして遺書を書き残すとしたならば、こんな文句があるだらう。――
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枯木も山のにぎ
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