おちつく自信[#「こゝろがおちつく自信」に傍点]を私は持つてゐる。
一月六日[#「一月六日」に二重傍線] 雪しぐれ。
今にも雪が降りだしさうな、――降りだした。
寒の入、寒らしい寒さだ(一昨冬の旅をおもひだす)。
昨日も今日も独坐無言。――
一月七日[#「一月七日」に二重傍線] 曇。
雪、雪、寒い、寒い、身も心も冷える。……
――人を憎み物を惜しむ執着から抜けきらない自分をあはれむ。――
終日不動、沈黙を守る、落ちついてゐることの幸福感。
[#ここから1字下げ]
煩悩即本能、本性発揚[#「本性発揚」に傍点]
統制、自律的に、社会国家的に
生活、生活の展開
人間、人間の価値、人生の意義
[#ここで字下げ終わり]
一月八日[#「一月八日」に二重傍線] 雪時雨。
みそつちよも寒さうにそこらをかさこそ。
煙草がなくなつた、炭もなくならうとしてゐる、石油も乏しくなつた、米も残り少ない、醤油も塩も。……
樹明君からの来書は私の胸を抉るやうに響く、あゝすまない/\。
私は肉体的には勿論、精神的にも死の方へ歩いてゐる、生の執着は死の誘惑ほど強くない。
文字通り、門外不出だつた。
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