、あさましい痴情風景を見せつけられた。
夜は同宿の植木屋老人に誘はれて諸芸大会見物、二十銭の馬鹿笑である。
咳が出て困る、感冒がこぢれてどうやら喘息らしくなる、睡れないのは苦しいが、苦しくてもこらへる外ない。
一月四日[#「一月四日」に二重傍線] 曇。
早朝、入浴して、そして二三杯ひつかける。
身心何となく不調、焼酎のたゝりらしい、慎むべきは火酒を呷ることだ、省みて、自分の不節制に驚く。
午後、無事帰庵。
やつぱり自分の寝床がどこよりもよろしい!
[#ここから1字下げ]
朝湯極楽 朝酒浄土
醒めりや地極[#「極」に「マヽ」の注記]の鬼が来る
個人を不幸にするもの、私を意味なく苦悩せしめるものは――
暴飲
借金
今年の私はこの二つの悪徳から脱却しなければならない。
年をとつて、貧乏すると、食意地[#「食意地」に傍点]だけになる、我ながらあさましいけれど疑へない事実だ。
[#ここで字下げ終わり]
一月五日[#「一月五日」に二重傍線] 時雨。
めづらしく朝寝した、肉身をいたはつて臥床。
喘息らしい、それもよからう、からだが病めば[#「からだが病めば」に傍点]、こゝろが
前へ
次へ
全40ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング