きてはゐられない、からだがふら/\する、また火燵を出して寝る、そして読書、反省、追想、思索。
今朝はいつのまにやら新聞が来てゐる、新聞を読んで、時事を知り時代を解することは私たちのつとめ[#「つとめ」に傍点]であり、なぐさめ[#「なぐさめ」に傍点]であり、勉強でもある、新聞はありがたいもの[#「ありがたいもの」に傍点]だ。
寝てゐたが、たまらなくなつて出かける、やうやくにして米と酒と石油とを少々借ることが出来た(日頃の馴染ではあるけれど、家も名も知らない私のやうなものに快く貸して下さつたS店の妻君とM老人とに感謝する)。
六日ぶりに飯を食べ酒を飲んだ、まことにそれは御飯[#「御飯」に傍点]であり、お酒[#「お酒」に傍点]であつた! 味うてゐるうちに眼がくらむやうな心地であつた、ほつとするよりがつかりしたやうに。
雨露のめぐみ[#「雨露のめぐみ」に傍点]といつたやうなものをしみ/″\感ずる、衆生の恩[#「衆生の恩」に傍点]を感ずる。
――泣くな、怒るな、耽るな。……
飯の味、酒の味、人の味[#「人の味」に傍点]、――生活の味。
おかずがないので、鰯のあたま[#「鰯のあたま」に傍点]を味ふ
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