蜘蛛が這ふ、蚊が飛ぶ、あまり温かいので。
裏山で最初の笹鳴を聴いた。
夜は雨風になつた、さびしかつた、寝苦しかつた。
いよ/\アブラが切れてしまつた!
いつとなく、ぐつすり睡つた。
[#ここから2字下げ]
(序詩)
天[#「天」に傍点]、我を殺さずして詩を作らしむ[#「我を殺さずして詩を作らしむ」に傍点]
我生きて詩を作らむ[#「我生きて詩を作らむ」に傍点]
まことの詩[#「まことの詩」に傍点]、我みづからの詩[#「我みづからの詩」に傍点]
天そのものの詩を作らむ[#「天そのものの詩を作らむ」に傍点]――作らざるべからず[#「作らざるべからず」に傍点]
(逍遙遊)
ほんたうの人間は行きつまる
行きつまつたところに
新らしい世界がひらける
なげくな、さわぐな、おぼるるな
(旅で拾ふ)
のんびり生きたい
ゆつくり歩かう
おいしさうな草の実
一ついただくよ、ありがたう
[#ここで字下げ終わり]
三月七日[#「三月七日」に二重傍線] 晴れたり曇つたり、そして降つたり。
春寒、あたりまへのよろしさ。
――来ない、来ない、ほんに待つ身はつらい!
しづかに紫蘇茶をすゝる。
とても起
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