、考へさせられることが多くて、おのづから頭が下る。
四日ぶりに外出、梅は満開、椿ぽたぽた、今年の梅は厳寒のために蕾が堅かつたが、数日来の暖気でトーチカもたちまちくづれてしまつた。
外出途中、今日はとても飲みたかつたが、ぢだんだ踏んで我慢した、善哉々々!
政府対議会(軍部対議会といつた方が痛切だらう)、その接触交渉がなか/\微妙らしい、大西少佐の失言、政党本部占拠事件、右翼(?)の安部党首襲撃、等々、物情何となく騒然としてゐる、上下左右新旧の摩擦相剋は相当深酷らしく考へられる。
日本はどうなるか、どうすればよいか、どうしなければならないかは日本人自身が解決しないではゐられない問題である(私のやうなものでも思案してゐる!)。
……私は遂に無能無才、身心共にやりきれなくなつた、どうでもかうでも旅にでも出て局面を打開し[#「開し」に「マヽ」の注記]なければならない、行詰つた境地からは真実は生れない、……窮余の一策として俳諧の一筋をたよりに俳諧乞食旅行[#「俳諧乞食旅行」に傍点]に踏み出さう!
火燵が入[#「入」に「マヽ」の注記]らなくなつた、火鉢も僅かの火ですむやうになつた、ありがたいありがた
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