が)。
句稿二篇書きあげる、さつそくポストへ。
W店で飲む、酔つぱらつて、また泊つてしまつた。
三月二日[#「三月二日」に二重傍線]
酔境に東西なく[#「酔境に東西なく」に傍点]、酔心に晴曇なし[#「酔心に晴曇なし」に傍点]。
三月三日[#「三月三日」に二重傍線] 曇。
さみしくも風が吹く。……
三月四日[#「三月四日」に二重傍線] 曇。
沈欝。――
フアブルの昆虫記を読む。
初蛙が枯草の中で二声鳴いた。
昨日も今日も絶食、そして明日!
たうとう不眠、長い長い夜であつた。
[#ここから3字下げ]
春風の吹くまま咲いて散つて行く[#「春風の吹くまま咲いて散つて行く」に傍点](旅出)
[#ここで字下げ終わり]
わざとかういふ月並一句を作つてこゝに録して置く。
[#ここから1字下げ]
其中雑感
戦争、貧乏、孤独。
散歩、酒、業《ゴウ》。
俳諧乞食業。
定型と伝統。
歴史的必然。
旅で拾うた句。
[#ここで字下げ終わり]
三月五日[#「三月五日」に二重傍線] 曇――雨。
身心平静、今日もまた絶食、落ちついて万葉鑑賞、万葉集は尊い古典である、動かされ、教へられ
前へ
次へ
全40ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング