りも彷徨[#「彷徨」に傍点]する、あれやこれやと気になつて落ちついてゐられない。
春風しゆう/\、雲雀がうたひ草が咲いてゐる、あたゝかすぎるほどあたゝかだつた。

 二月廿八日[#「二月廿八日」に二重傍線] 晴。

春はうれしや、貧乏のつらさ!
炭だけはK店から借りたが、さて米はどうするか、また絶食するか、貧乏はつらいね!
人に教へられたというて、中年の放浪者が訪ねて来た、俳行脚をつゞけてゐるといふ、対談しばらく、短冊一枚書かされた、世間師としては、彼は好感の持てる人柄だつた。
私もいよ/\旅に出ようと思ふ、旅のことをいろ/\考へてゐるうちに夜が明けてしまつた。
身心が何となくのび/\した、あゝ旅と酒とそして句[#「旅と酒とそして句」に傍点]。
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省みて疚しくない生活[#「省みて疚しくない生活」に傍点]。
プラスマイナスのない世界[#「プラスマイナスのない世界」に傍点]。
[#ここで字下げ終わり]

 三月一日[#「三月一日」に二重傍線] 晴。

春風春水一時到、といつたやうな風景。
身辺整理。
ありがたや、火鉢に火がある(なさけなや、米桶に米はなくなつてしまつた
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