する、疲れも同様に。
辛味苦味は食慾を増進する。
酸味は――酢物は酒としつくり調和する。
[#ここで字下げ終わり]

 二月十五日[#「二月十五日」に二重傍線] 晴――曇。

春が来た、春が来た、空から太陽から、土から草から、いろんな虫が出て来て飛んだり這うたり、――だが、私は冬ごもりの暗い穴から抜け出せない。
今日も糒ばかり食べてゐて苦しかつたけれど、自信のある句がつぎ/\に作れてうれしかつた。
夜はいつまでも眠れなくて読書した、米もなくてはならないものだが、本もなくてはならないものだ。

 二月十六日[#「二月十六日」に二重傍線] 曇――雨。

食養不足、睡眠不足で身心不調。
頭痛、腹痛、そして心痛、――不死身[#「不死身」に傍点]にちかい私も少々弱つた。
専念に句作し推敲する。――
今夜も不眠、読書する外なかつた。
酒よりも飯を、肉よりも野菜を要求する。
[#ここから1字下げ]
利休が茶の湯の心得を説いた言葉の中に、
  花はその花のやうに[#「花はその花のやうに」に傍点]
といふ一項があつた、うれしい言葉である。
物のいのちを生かし[#「物のいのちを生かし」に傍点]、物の徳を尊
前へ 次へ
全40ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング