だ。
紀元節、建国祭、今日から国民総動員第二強調週間。
憲法発布五十年祝賀式典。
天地の間にりんりんたるものがある[#「天地の間にりんりんたるものがある」に傍点]。
午後、樹明君来庵、同道して暮羊君を見舞ふ、酒肴の御馳走になり、餅を貰うて帰庵。
酒はうまい、餅はうまい……みんなうまい!

 二月十二日[#「二月十二日」に二重傍線] 晴。

春日和。――
身のまはりをかたづける、いつでも死ねるやうに!
糒と餅と、そして味噌と砂糖と、それだけ!
夕暮、油買ひに街へ、例によつて一杯、あゝ極楽々々。
歯がぬけた、さつぱりした、その歯は残つてゐる四枚の中の一枚で、歯として役立たないばかりでなく、気にかゝる邪魔物であつた。

 二月十三日[#「二月十三日」に二重傍線] 晴――曇――雨。

まさしく春だ!
あたゝかい飯が食べたい!
今日はとてもあたゝかだつた、夜になつてあたゝかすぎる雨が降りだした。……

 二月十四日[#「二月十四日」に二重傍線] 曇。

いかにも春雨らしく降つた。
沈欝たへがたし、うつら/\昼夜なし。
更けてよい月夜になつた、十五夜らしい。
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飢は甘味を要求
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