女郎
┌○あしびきの山の雫に妹待つと吾立ち濡れぬ山の雫に         大津皇子
└○吾を待つと君が濡れけむあしびきの山の雫にならましものを     石川郎女
 ○健ら男や片恋せむと歎けども醜の健ら男なほ恋ひにけり       舎人皇子
 ○小竹《サヽ》の葉はみ山もさやにさやげどもわれは妹思ふ別れ来ぬれば    柿本人麿
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 二月八日[#「二月八日」に二重傍線] 曇、小雪。

いちめんのわすれ雪、思ひ出したやうに降る。
生活力[#「生活力」に傍点]のはかないのに自分ながら呆れる。
机上の梅がやうやく開かうとしてゐる。
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讃酒歌    以白酒為賢者 以清酒為聖人[#「聖人」に傍点]
大伴旅人(万葉集)
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 しるしなき物を思はずは一|杯《ツキ》のにごれる酒を飲むべく有らし
 賢こみて物いふよりは酒のみて酔泣するしまさりて有らし
 言はむすべせむすべ知らに極まりて貴きものは酒にし有るらし
 なかなかに人とあらずば酒壺になりてしがも酒にしみなむ
 あなみにくさかしらをすと酒のまぬ人をよく見れば猿にかも似む
 もだをりて賢し
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