うな。
街へ、すぐ戻つた。
蕎麦を食べ、一本傾けた。
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  昭和十二年を送る
ことしもこゝにけふぎりの米五升[#「米五升」に傍点]
ことしもをはりの虫がまつくろ

 自己を省みて[#「自己を省みて」に白三角傍点]


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    新古今集より
 窓近き竹の葉すさぶ風の音にいとゞみじかきうたたねのゆめ      式子内親王
   朗詠――風生竹夜窓間臥
 道のべに清水流るゝ柳蔭しばしとてこそ立ちとまりつれ        西行法師
 夕づく日さすや庵りの柴の戸に寂しくもあるかひぐらしの声      前大納言忠良
 さびしさに堪へたる人の又もあれないほりならべむ冬の山里      西行法師
 かりそめの別れと今日を思へども今やまことの旅にもあるらむ     俊恵法師
 あけばまた越ゆべき山の峯なれや空ゆく月の末の白雲         藤原家隆
 年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけりさよの中山        西行法師
 遙かなる岩のはざまにひとりゐて人目おもはで物思はばや       〃
 ながめわびそれとはなしに物ぞ思ふ雲のはたての夕ぐれの空  
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