点]。
創作は一種の脱皮[#「一種の脱皮」に傍点]ともいへる。
宛名のない遺言状[#「宛名のない遺言状」に傍点]ともいへやう。
[#ここで字下げ終わり]

 十二月廿三日[#「十二月廿三日」に二重傍線] 曇、時雨。 廿四日[#「廿四日」に二重傍線] もおなじく、雨。

昨夜も帰れなかつたが、今日も帰れさうにない。
駅で遺骨を迎へる、あはれ、六百五十柱、涙がとめどもなくこぼれて困つた。
熟睡が何よりもうれしかつた。……

 十二月廿五日[#「十二月廿五日」に二重傍線] 晴。

小春日和。
いつもの気まぐれで、歩いて防府へまはる、おもひでのつきない道すぢである。――
S君を訪ねる、不在、M君には逢つたが客来なので遠慮する、I君を訪ねる、また不在、E君も同様に。……
最後にY君を訪ねた(といふよりも尋ねた)、幸にして在宅、十何年ぶりの再会だ、旧友のなつかしさあたゝかさが身にしみた。
暮れて――更けて別れる、月が出た、おもひでを反芻しながらやうやくにして帰庵した。
労れた、労れた、ぐつすりと寝た。

 十二月廿六日[#「十二月廿六日」に二重傍線] 晴――曇――雪。

祖母忌。――
さむ/″\と
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