に焼酎と蝦雑魚とを買うて戻つて飲んだり食べたり、御馳走々々々。
――物に触れ事につれ、ともすれば心が動く、心の芯[#「心の芯」に傍点]は動かないつもりだけれど、やつぱり私は落ちつかない。――
からだがとかくよろめく[#「からだがとかくよろめく」に傍点]、アルコールの害毒と老衰とを感じないではゐられない。
アルコールのおかげで快眠、夢中大きな鯉を捕へた、何の前兆か、ハツハツハツ!
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『わが冬ごもりの記』
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 十二月十四日[#「十二月十四日」に二重傍線] 晴、曇、時雨。

午前中は申分のない小春凪だつた。
朝酒一本(昨夜の残りもの)、うまいな、ありがたいな、いや、もつたいないな、ほんに朝湯朝酒朝……。
昭和十二年十二月十三日夕刻、敵の首都南京城を攻略せり、――堂々たる公報だ
なつかしい友へたより二通、澄太君へ、無坪君へ。
午後は買物がてら散歩。
今晩から麦飯[#「麦飯」に傍点]にした、それは経済的[#「経済的」に傍点]といふよりも生理的[#「生理的」に傍点]な理由による(といつても、新聞代位は倹約になるが)、私はだいたい食べすぎる[#「食べす
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