らたよりがないのが気にかかつてならない)。
さつそく街へ出かけて買物いろ/\、――米、醤油、石油、マツチ、味噌、煙草、等々等々。
何といふ飯のうまさ!(貧乏は物の味を倍加する)ありがたさ!(困窮はその物の価値を認識せしめる)
暮羊君、久しぶりに来庵、蕎麦掻きを御馳走する、同君から金と傘とを借りて、再び街へ出かけた。
夜、湯田まで出かけて入浴する、十二日ぶりの入浴である、すぐ引き返した、そして心ゆたかに独酌のよさを味つた。
私は私のうちにりんりんたるものを感じる[#「私は私のうちにりんりんたるものを感じる」に傍点]、それを正しくうたふことが私の当面の仕事である[#「それを正しくうたふことが私の当面の仕事である」に傍点]。
酒が今までのやうにうまくなくなつた、それは心理的[#「心理的」に傍点]といふよりも生理的変化[#「生理的変化」に傍点]が私の内部に起つてゐるからであらう、とにかく私はアルコールを揚棄しなければならない[#「私はアルコールを揚棄しなければならない」に傍点]。

 十一月廿九日[#「十一月廿九日」に二重傍線] 曇。

起きるとすぐ火を焚きつける、火はうれしいものだ、冬の火は
前へ 次へ
全65ページ中43ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング