日[#「十月卅一日」に二重傍線] 曇。
たよりはうれしい、木の葉がうつくしいやうに。
散歩、一杯また一杯、一歩一杯[#「一歩一杯」に傍点]とでもいはうか。
樹明君の案内を受けたので、農学校の運動会へ出かけたが面白くないので(私はスポーツ、一切の勝負事に興味を失つてゐる)、早々帰庵して読書。
生きものが――むろん人間が――私が――生きてゆくことはなか/\むつかしい、木の実草の実を食べて、それですむならばどんなにラクだらう、などゝ考へる。
閑居句作[#「閑居句作」に傍点]、その外に私の生きる道があるかよ。
読みたい本があつて、そして酔へる酒[#「酔へる酒」に傍点]があるならば、そこは極楽だ。
十一月一日[#「十一月一日」に二重傍線] 曇、時雨。
早起、安静。
詩作報国[#「詩作報国」に傍点]をおもふ、日本を歌へ[#「日本を歌へ」に傍点]! 歌はなければならない[#「歌はなければならない」に傍点]。
純情[#「純情」に傍点]を失ふなかれ、正直であれ、自他に対して。
散歩がてらポストへ。
――ふらふら湯田をさまよふた、そして自分をなくしてしまつた。――
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