飲む、アルコールなしでは夢がなさすぎる私の生活だ!
あちらこちら彷徨、今夜も湯田泊。
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○流転しながらも安定を失はざれ。
○動中静。
○謙遜であれ、自他に対して。
[#ここで字下げ終わり]

 十月廿八日[#「十月廿八日」に二重傍線] 曇。

ぼう/\として、歩いて戻る、……いつものやうに、つゝましく、わびしく。……

 十月廿九日[#「十月廿九日」に二重傍線] 曇。

降りさうで降らない、だん/\晴れる。
――生死の問題がこびりついて離れない、死を考へるはそれだけ生に執着してゐるのだ、生死超脱[#「生死超脱」に傍点]の境地には生死の思念はないのだ。――

 十月三十日[#「十月三十日」に二重傍線] 雨――曇。

久しぶりの雨、秋らしくしよう/\と降る。
身心沈静。
迷悟共に放下せよ[#「迷悟共に放下せよ」に傍点]、一切空に徹せよ[#「一切空に徹せよ」に傍点]。
山野逍遙遊、雑木紅葉のうつくしさ、秋の野草のうつくしさ。
菊の花のよろしさは、りんだうのよろしさは。
純真[#「純真」に傍点]と情熱[#「情熱」に傍点]と、そして意力[#「意力」に傍点]と。

 十月卅一
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