今更ながら、買ひ被られる心苦しさ[#「買ひ被られる心苦しさ」に傍点]、見下げられる気安さ[#「見下げられる気安さ」に傍点]を思ふ。
散歩がてらポストへ、――櫨紅葉が日にましうつくしうなる、野菊が咲きだした、龍膽も咲いてゐる、……秋は野に山にいつぱいだ[#「秋は野に山にいつぱいだ」に傍点]。
おいしい昼餉をいたゞく。
何と敏感にして、そして手足不自由な秋蠅よ。
午後、湯屋へ、ばら/\雨に濡れながら。
今日は宮市の花御子祭[#「花御子祭」に傍点]ださうな、昔なつかしいおもひにうたれる。……
おだやかな夕焼、よき眠あれ。
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┌Over value
└under value
[#ここで字下げ終わり]

 十月廿六日[#「十月廿六日」に二重傍線] 今日も快晴。

たよりいろ/\、いづれもうれしいが、とりわけて、アメリカのOさん、イキス[#「キス」に「マヽ」の注記]のKからのはうれしかつた。
うれしいこと、かなしいこと、さびしいこと。
払へるだけ払ひ、買へるだけ買ふ、――それからまた、散歩、湯田へ、飲む、酔ふ、泊る。

 十月廿七日[#「十月廿七日」に二重傍線] 晴。

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