わけぎの球根を分けて貰うて植ゑる、安心々々。
夕方、約の如く暮羊君来庵、酒と新菊とを持つて、そして壱円投げだして飲まうといふ、応とばかりに街へ出かけて買物いろ/\、飲む、笑ふ、二十日月がほんのりとのぞいてきた、とてもおいしかつた、うれしかつた。
松茸と柚子と新菊との三重香[#「松茸と柚子と新菊との三重香」に傍点]、秋の香気が一碗の中にあつまつてゐる[#「秋の香気が一碗の中にあつまつてゐる」に傍点]、秋は匂ひだ、その匂ひの凝つたのが松茸の香であり、柚子の香である。
[#ここから1字下げ]
   今日の買物
一金十銭   ハガキ
一金三十銭  酒
一金二十九銭 煮干
一金九銭   玉葱
一金四銭   大根
一金五十五銭 酒
一金六銭   豆腐
一金九銭   揚豆腐
一金十四銭  松茸

□小鳥のおもひで
[#ここから2字下げ]
□田雀――
□渡り鳥――
□雲雀の巣――
□眼白――
[#ここで字下げ終わり]

 十月廿四日[#「十月廿四日」に二重傍線] 今日も好晴。

おかげでぐつすり睡れて、早く眼が覚めた、ランプをともして読書してゐるうちに、鶏が啼き、お寺の鐘が鳴り、会社のサイレンが鳴る、
前へ 次へ
全65ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング