わけぎの球根を分けて貰うて植ゑる、安心々々。
夕方、約の如く暮羊君来庵、酒と新菊とを持つて、そして壱円投げだして飲まうといふ、応とばかりに街へ出かけて買物いろ/\、飲む、笑ふ、二十日月がほんのりとのぞいてきた、とてもおいしかつた、うれしかつた。
松茸と柚子と新菊との三重香[#「松茸と柚子と新菊との三重香」に傍点]、秋の香気が一碗の中にあつまつてゐる[#「秋の香気が一碗の中にあつまつてゐる」に傍点]、秋は匂ひだ、その匂ひの凝つたのが松茸の香であり、柚子の香である。
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今日の買物
一金十銭 ハガキ
一金三十銭 酒
一金二十九銭 煮干
一金九銭 玉葱
一金四銭 大根
一金五十五銭 酒
一金六銭 豆腐
一金九銭 揚豆腐
一金十四銭 松茸
□小鳥のおもひで
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□田雀――
□渡り鳥――
□雲雀の巣――
□眼白――
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十月廿四日[#「十月廿四日」に二重傍線] 今日も好晴。
おかげでぐつすり睡れて、早く眼が覚めた、ランプをともして読書してゐるうちに、鶏が啼き、お寺の鐘が鳴り、会社のサイレンが鳴る、
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