いほどの好天気である、そこらをぶら/\歩いて、学校に寄り新聞を読んで戻つた。
戦争の記事はいたましくもいさましい[#「いたましくもいさましい」に傍点]、私は読んで興奮するよりも、読んでゐるうちに涙ぐましくなり遣りきれなくなる。……
O主人が頼んで置いた松茸を持つて来て下さつた、早速、二包に荷造りして発送する、一つは緑平老へ、一つは澄太君へ(両君も喜んでくれるだらうが私も嬉しい)。
裏山逍遙、秋いよ/\深し。
松茸を焼いて食べ煮て食べる、うまいな、うまいな。
夜、久しぶりに暮羊君来庵、餅を焼き渋茶を沸かして暫らく話す、近々一杯やらうといふ相談がまとまる。
今夜もよい月夜だつた、しづかに読みしづかに寝る。

 十月廿三日[#「十月廿三日」に二重傍線] 好晴。

澄みきつた空に朝月の清けさ、うつくしい秋景色。
飯がうまく頭が軽い、ほんに好い季節ではある。
鶲がやつて来て啼く、鵯も出て来て啼く。
ポストへ、――山の鴉がしきりに啼きさわぐ。
ちよいと一杯が三杯になつた! ほろ酔のこゝろよさ!
茶の花がうつくしい、熟柿もうまい。
またポストへ、そしてまた一杯! 嚢中無一文!
W老人から、ちしや苗と
前へ 次へ
全65ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング