たうにすまない」に傍点]と思ふ、合掌低頭して懺悔し感謝した。……
まことに日本晴、散歩する、山口へ行く、シヨウチユウのたゝりで動けなくなり、たうとうK旅館に泊つた。
泥酔の快! いたましい幸福だ。
十月廿一日[#「十月廿一日」に二重傍線] 晴。
どうやらかうやら払ふだけは払へた、歩いて帰る、秋色こまやかであつた。
昨夜、酔中に手帳を盗まれてしまつた、盗んだ者には何の価値もないけれど、盗まれた私は大いに困る。
信濃のHさんから、米と餅とを頂戴した、万謝、何と餅のうまいこと!
晩酌一本、上機嫌になつて、牧水の幾山河[#「幾山河」に傍点]を読む、面白い面白い。
まいばん良い月で、睡れても睡れなくてもうれしい。
十月廿二日[#「十月廿二日」に二重傍線] 晴れきつて雲のかけらもない、午後は少し曇つたが。
――戦争は、私のやうなものにも、心理的にまた経済的にこたえる、私は所詮、無能無力で、積極的に生産的に働くことは出来ないから、せめて消極的にでも、自己を正しうし、愚を守らう[#「愚を守らう」に傍点]、酒も出来るだけ慎んで、精一杯詩作しよう、――それが私の奉公である。
ぢつとしてはをれな
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