柿を食べて、どうやらさつぱりした、――これが本当ならありがたいうれしいと思ふ、同時にさびしくもかなしくも思ふ。
私は酒を飲む時はいつも一生懸命だつた、いのちがけで[#「いのちがけで」に傍点]飲んで飲んで飲みつぶれてゐたのである!
夜はのんきに古雑誌(それも主婦の友だ!)を読んでゐたが、どうしても睡れない、明方近くとろ/\としたが、すぐ覚めて起きた、不眠はたしかに罰だ[#「不眠はたしかに罰だ」に傍点]! なまけものにうちおろされる鞭だ!

 十月十七日[#「十月十七日」に二重傍線] 曇。

しづかなるかな。……
稲扱機のひゞきがなつかしくきこえる。
風、秋風だ、木の葉がちる。
秋寒、何となくうすら寒い。
炭屋まで出かける、火鉢がこひしうなつたのだ、火鉢に手をかざしてゐないとおちつきがわるい。
今夜はともかく眠れた、夢は多かつたが。

 十月十八日[#「十月十八日」に二重傍線] 晴、満月。

寒い、冷たい、冬が近いことを思はせる、今朝から火鉢に火をいける。
最近二ヶ月間の変化を考へると、私はしゆくぜんとする、自然も私もすつかり変化した。
うれしいたよりいろ/\、ことにアメリカからのそれはう
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