はなか/\寒かつた。
裏藪はまさに秋風、柿の落葉がうつくしうなる。
たよりいろ/\、ありがたし/\。
K店のマイナスを払ふことが出来たのはうれしい、マイナスを払つた気持のよさはマイナスに苦しんだものでないと解らない。
品行方正、どうやら落ちつけさうだ。
今夜はぐつすり睡れた、めづらしい熟睡だつた。
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人間は互に理解し理解せられること[#「理解し理解せられること」に傍点]を欲する、それは所有慾名聞慾でなくして真実心だ。
自由な自由律[#「自由な自由律」に傍点]! 私は自由律の自由を要求する。
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十月十六日[#「十月十六日」に二重傍線] 時雨。
けふもつゝましく。――
かへりみると、八月九月はきわめて多事多難だつた、自分で自分を殺すやうな日夜がつゞいた、そして死にもしないで、私はこの境地まで来た。……
身辺整理、何もかもかたづけて――まだ屋根と野菜畑とはかたづかないが――ほつとする、おちついてゆつたりした気持である。
濡れてポストまで、傘も帽子もなくなつたから!
一杯ひつかけたが、いつもほどうまくなかつた、後味もよくなかつた、戻つてから熟
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