月一日[#「九月一日」に二重傍線] 曇。
二百十日、関東大震災記念日。
アルコールなしで謹慎、追憶、懺愧。
九月二日[#「九月二日」に二重傍線]――九月十日[#「九月十日」に二重傍線] 晴曇。――
彷徨、身心落ちつかず、やるせなさたへがたし。
九月十一日[#「九月十一日」に二重傍線] 曇。
身辺整理。
人間を再認識すべく市井の中へ飛びこむ[#「人間を再認識すべく市井の中へ飛びこむ」に傍点]覚悟を固める、恐らくは私の最後のあがき[#「私の最後のあがき」に傍点]であらう。
五時の汽車で、樹明君と共に下関へ、――嬉しいやうな、悲しいやうな、淋しいやうな、切ない気持だつた。
七時すぎ下関着、雨が降るのでタクシーで、N家へ行く、こゝで私は人間を観やう[#「人間を観やう」に傍点]とするのである。
老主人といつしよに飲む、第一印象はよくもなかつたがわるくもなかつた。
私は急転直下した、山から市井へ、草の中から人間の巷へ。……
樹明君と枕をならべて寝る、君は間もなく寝入つたが、私はいつまでも眠れなかつた、万感交々至るとは今夜の私の胸中だ。
九月十二日[#「九月十二日」に二重傍線] 曇
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