月十一日[#「七月十一日」に二重傍線] 曇。
おもひだしたやうに時々ふる。
早起、日記をつけてゐるところへ、樹明君がさうらうとしてやつて来た、その素振があたりまへでない、また脱線沈没したのだらう、かなしくなる、しばらく寝たり起きたりしてゐたが、さうらうとして帰つていつた、さびしいな。
此頃は郵便も来ないのか!
プチブル奥さんの会話を聞くともなく聞く、――このごろは食べられないで困ります、食べい食べいといはれるんですけど、――私は考へる、――私は食べられて困る、なるたけ小食でありたいと思ふのに大食して困る、――どちらがほんたうか、どちらが幸福か。――
新聞を読んでゐると、自殺者心中者が多いのに胸をうたれる、生きてゐる生甲斐のある世の中でもないけれど、死んでしまへばそれまでだ。
午後、ポストへ、ついでにすこし散歩する、新町へまはつて、ちよつくら一杯!
あまり寂しくて、やりきれないので、澄太君と緑平老とへたよりを書く。
夜はしづかに寝た。
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私の境涯は――
山頭火即俳句だ[#「山頭火即俳句だ」に傍点]。
俳句即山頭火[#「俳句即山頭火」に傍点]とはうぬぼれていないが(
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