ふ。
蠅を打つにも、全心全力で打てば、めつたに打ちそこなうことはない。
みん/\蝉が鳴きだした、まだ短かくて下手だが私の好きな声だ。
寝苦しい。……
[#ここから1字下げ]
┌くよ/\せずに事を運べ。
└けち/\せずに物を尊べ。
[#ここで字下げ終わり]

 七月七日[#「七月七日」に二重傍線] 曇――晴。

七夕祭、山口は賑ふだらう、湯田へ行きたいがバス代なし。
正法眼蔵拝読。
I家の人から馬鈴薯を貰ふ、私は薯類をあまり好かないけれど、それを下さる人情をありがたく頂戴する。
ハダカになりだした、世の中ハダカでよいわいな。
午後、油買ひに、いつものおぢいさんおばあさんの店で、焼酎一杯ひつかける、十二銭天国[#「十二銭天国」に傍点]だ。
まことにこれやこの酒仏飯仏そして水仏[#「酒仏飯仏そして水仏」に傍点]。
夜は芭蕉俳句鑑賞。
芭蕉はやつぱり偉大な詩人であつたと痛感する。
[#ここから4字下げ]
泥落し[#「泥落し」に白三角傍点]
 農村年中行事の一つとして
[#ここで字下げ終わり]

 七月八日[#「七月八日」に二重傍線] 晴、時々驟雨。

夏の朝のよろしさ、みん/\蝉のよろしさ。

前へ 次へ
全110ページ中95ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング