推定日)、読経焼香して彼の冥福を祈つた、彼はまことに不幸な正直な人間であつたが。――
樹明君へ告白の手紙を書く、かういふ手紙を今日書いたといふことも何かの因縁だらう。
午後は散歩、三時間あまり、新町から椹野川土手へ、途中、S老人の店で一杯借りる、月草を折つて戻る、昼顔は見つからなかつた。
米がなくなつた、煙草もなくなつた、石油もなくならうとしてゐる、生命だけが、幸にして或は不幸にして、なくならない!
六月十八日[#「六月十八日」に二重傍線] 晴。
早起して身辺整理、悪筆を揮ふたのもその一つ。
一度、学校まで出かけたが、樹明君に逢ひにくゝて新聞を読んだゞけで戻つた、そしてまた出かけて、やうやく樹明君に逢ふ、君はいつものやうに万事飲み込んでゐて、米をくれる、酒を魚を御馳走してくれた。
最初の酒と魚とはほんにありがたかつた、おいしかつた、F屋での散財はおもしろかつたけれど、つまらなかつたと思ふ。
とにかく私は今月になつて初めて刺身を食べ、三月ぶりに芸者と遊ぶほどののんきさを持つたのである。
まさに樹明大明神! 南無樹明菩薩!
六月十九日[#「六月十九日」に二重傍線] 曇。
朝寝。
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