みん蝉も最初の唄をうたつたやうだつたが。
筍がぞく/\出初めた、今までは毎日蕗を食べたが、これからは毎日筍を食べることだらう。
蕗から筍へ[#「蕗から筍へ」に傍点]、――私の季節のうつりかはり[#「私の季節のうつりかはり」に傍点]である。
待つものが来ない、失望落胆。
飢が私をして学校の米を貰はしめた、樹明君に対しても(私自身に対しても)心苦しいといつたらなかつた。
いつまでかうした生活がつゞくのか、私はどこまでだらし[#「だらし」に傍点]がないのだらう。
飯ほどうまいものはない、私たちのやうな日本人には。
腹いつぱい食べて、空を仰げば、今日の日輪かゞやく。
W老人からトマト苗を分けて貰つて植ゑつける、五本、いつしよに薯やら葱やら貰つた、感謝。
――魚売の声よそにふけ青嵐[#「魚売の声よそにふけ青嵐」に傍点]――これは也有翁の閑居吟であるが、私の場では、
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豆腐屋のラツパも寄らない青葉若葉
[#ここで字下げ終わり]
である、呵々。
六月十七日[#「六月十七日」に二重傍線] 曇――晴。
早起、なか/\降らない。
ぼつ/\田植が始つた。
亡弟二郎の祥月命日(私の
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