て二丁借りてくる(酒屋へは寄れなかつた)。
豆腐の味、――淡如水如飯。
夜、心臓がしめつけられるやうに苦しくなつたので、いそいで句帖と日記とを書きつけたが何事もなかつた。
いつも覚悟は持つてゐるけれど、かういふ場合の、孤独な老人はみじめなものだらう!
昨夜は宵からあんなによく睡れたのに、今夜はいつまでも睡れない、うつら/\してゐるうちに、いつとなくみじか夜は明けてしまつた。……
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俳句は――自由律俳句はやさしくてそしてむつかしい。
門を入るは易く、堂に上るは難く、そして室に入るはいよ/\ます/\難し。
句はむつかしい、特に旅の句はむつかしい、と句稿を整理しながら、今更のやうに考へたことである。
時代は移る、人間は動きつゞけてゐる、句に時代の匂ひ、色、響があらば[#「あらば」に「マヽ」の注記]、それはその時代の句ではない。
貫き流るゝもの[#「貫き流るゝもの」に白三角傍点]、――それは何か、問題はこゝによこたはる。
○その花が何といふ名であるかは作者には問題ではない、作者は花そのもの[#「花そのもの」に傍点]を感じるのである、しかし、その感動[#「感動」に傍点]を俳
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