と水』
  (父親の出奔、帰郷、家出)
『半自叙伝』
『うさき[#「き」に「マヽ」の注記]のころも』
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 六月三日[#「六月三日」に二重傍線] 曇。

沈静。――
下の家の主人が来て草を刈つてゐる、朝風にそよぐ青草をさくり/\と刈りすゝむ心持は快いものであらうと思ふ。
今日もまた、郵便も来ないのか!
午後、ポストまで出かけたついでに、農学校の畜舎に寄つて新聞を読む、至るところ近衛内閣万歳である、誰もが暗さに労れてゐるのだ。
けふも発熱の気味、からだのどこかに異変が起つてゐるらしい、それもよからう、仕方がないが、どうか痛まないやうに。……
蒸暑い、柿の青い葉が時々落ちる。
二夜分ねむれた、いやな夢を見たけれど。
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放てば手に満つ[#「放てば手に満つ」に白三角傍点]
此語句に道元禅師の真骨頂が籠つてゐる、おのづから頭がさがる。

昨日は昨日の夢。
今日は今日の現実。
明日は晴か曇か、それとも雨か。
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 六月四日[#「六月四日」に二重傍線] 晴。

好い季節だ(いつでも好季節といふのは観念としてゞある)。
好すぎる季節
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