六月二日[#「六月二日」に二重傍線] 晴――曇。

青い朝が動いてゐる、暁のすが/\しさ、みづ/\しさ、身心清澄、創作衝動を感じる。
鶉衣[#「鶉衣」に傍点]を読む、うまいことはうまいが、あまりにうまい。
洗濯、草苅、何といふ役に立たない肉体だらう!
石油買ひに出かける、ついでに入浴。
やるせない手紙をSに送る、あゝ。
数日ぶりに新聞を見る、予期の如く林内閣は退却した、そして大命は近衛公に降下し、公は拝受した、これで行き詰つてゐる非常時も非常時として安定するだらうと誰もが予期してゐる。
国家は国民の社会である。
朝晩はまだ春だが、日中はまつたく夏だ。
ありがたくおいしく御飯をいたゞいた。
旅、旅、旅に出たい、そしてワガママをたゝきつぶしたい(かなしいかな、私は行乞の旅をつゞける元気をなくしてしまつてゐる)。
不眠、しようことなしの徹夜読書、アブラが切れたのだらう。
東の空が白むのを待ちかねて起きる。――
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詩人は謙虚でなければならない、見よ慢心せる俳人のいかに多きことよ。
増上慢[#「増上慢」に傍点]はネコイラズみたいなものだ。
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『飯と酒
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