放下着。――
転身一路。――
泥中の魚、辛うじて水中の魚!
自他共に醜悪愚劣。
酒なし、煙草なし、石油なし、むろん小遣なんか一銭もなし。

 一月十日[#「一月十日」に二重傍線] 曇。

雪、初雪である。
自然にかへれ[#「自然にかへれ」に傍点]、自己にかへれ[#「自己にかへれ」に傍点]、人間にかへれ[#「人間にかへれ」に傍点]。
午後、暮羊君来庵、つゞいて樹明君来庵、牛肉の鋤焼で飲みはじめる、それから彷徨する。
苦しかつた、心臓が破裂しさうだつた。
雪あかりで自分を見詰める。――

 一月十一日[#「一月十一日」に二重傍線] 晴、曇、雪。

雪、雪、此地方には珍らしい雪景色を展開した。
雪を観賞する。
寒い、寒い、オイボレ、オイボレ。

 一月十四[#「四」に「マヽ」の注記]日[#「一月十四[#「四」に「マヽ」の注記]日」に二重傍線] 晴。

晴れて来た、をり/\氷雨が降つた。
どうにもならない私の人生。

 一月十二日[#「一月十二日」に二重傍線] 曇。

小雪ちらほら。
I老人来訪、彼もまた奇人たるを失はない。

 一月十三日[#「一月十三日」に二重傍線]

Nさん来庵。
こんと
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