ど出来てゐる人物でない限りは。
とりとめもない物思ひ、そこはかとない無常感、――私は弱虫、そしてなまけものだわい、強くなれ/\。
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微笑する句[#「微笑する句」に白三角傍点](時々は微苦笑する)
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怒号、悲鳴、溜息、欠伸。
呵々大笑はおもしろいが時代が許さないだらう。
慟哭もわるくないけれど感情が拒むだらう。
生活内容の豊富貧弱はともかくとして、生活態度を確立せよ[#「生活態度を確立せよ」に傍点]。
時代の空気を深く吸ひこめ、そしてすつかり吐き出せ。
[#ここで字下げ終わり]

 二月十日[#「二月十日」に二重傍線] 晴――曇。

春、春、春、晴れると、すつかり春だ。――
早すぎる春、嘘のやうな春だ。
足が痛い、頭が痒い、多少いら/\する、物資が乏しくなつたからでもあらう、もう米も石油も煙草も乏しくなつた。
たゞ死なゝいだけ[#「死なゝいだけ」に傍点]、それではつまらないやうにも考へ、また、それでよいやうにも思ふ。
とにかく小使銭がほしいな!
午後、ポストまで出かけたついでに湯にはいる、四日ぶりの外出、そして八日ぶりの入浴。――
[#ここから
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